渡辺明王将(名人・棋王=36)への挑戦権を争う、将棋の第70期王将戦挑戦者決定リーグが22日、開幕した。午前10時から東京・千駄ケ谷「将棋会館」では注目カード、藤井聡太2冠(18)対羽生善治九段(49)戦は、後手の羽生が勝利した。ここまで4連敗と相性が悪かった史上最年少プロから、初めて白星を挙げた。19日に竜王戦7番勝負の挑戦権を獲得したばかり。続く今局も制して、こちらも好スタートを切った。

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羽生がようやく藤井を下した。2018年2月、朝日杯オープン戦準決勝で初めて対戦して以来、公式戦は4連敗。今局は、踏み込んできた相手の仕掛けをうまくかわし、時間を使わせながら、投了に追い込んだ。

史上最年少プロは今年、一気にタイトルを獲得した。過去4局は段位が上位と言うこともあって上座だった羽生は今回、下座。段位は九段でも、相手がタイトル保持者の場合は序列が下になるためだ。先に入室していた藤井は上座にいた。昨年6月、王位戦挑戦者決定リーグ戦白組プレーオフでは、永瀬拓矢叡王(肩書は当時)が下座にいた。「永瀬さん、上座へ」と促した。今回はそんな光景は見られなかった。厳然たる現実を受け止めながら、盤に向かった。

前局、往年の手堅い指し回しで竜王戦の挑戦権を得た。2年ぶりにタイトル戦という大舞台に戻る。その会見の席上で、藤井の活躍ぶりについて問われると、「2冠ですから。大きな実績を残されている。日々の対局や棋譜を見て参考にしたり、勉強しているところです」と、存在を認めた。

強い年下との対局が増えるなか、最新の将棋に対応する必要性を実感している。「考えなくてはいけないことがたくさんありすぎ。最近の将棋を理解しているかは分からないが、後れを取らないように心掛けている」と、自らの立ち位置を理解している。

7人総当たりの王将リーグは2カ月あまりで6局をこなす短期決戦。ほぼ同時期に2日制の竜王戦7番勝負も加わる。前後の移動まで含めると4日を費やしながら、豪華メンバーの王将リーグや他棋戦も掛け持ちする。27日に50歳となる。タイトル獲得計99期(内訳は竜王7、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16期)のトップランナーは、気力を充実させてこちらでも挑戦権獲得を目指す。【赤塚辰浩】

◆王将戦 将棋の8大タイトル戦の1つ(ほかは竜王・名人・叡王・王位・王座・棋王・棋聖)。挑戦者決定リーグは前期シードの4人(広瀬・豊島・藤井・羽生)と、1次~2次予選を勝ち上がった3人(永瀬・木村・佐藤天)の計7人による総当たり戦。成績最上位者が挑戦者となる。95年の第44期には、当時まだ無かった叡王を除く6冠を保持していた羽生が、谷川浩司王将に挑戦。阪神淡路大震災に遭いながら対局をこなした谷川が4勝3敗で防衛した。翌年の第45期は、6冠すべてを防衛して再度挑戦者として登場した羽生が谷川に4連勝。史上初の7冠全制覇を達成した。