義輝最期の戦いのシーンは、撮影再開後すぐの収録だったそう。向井と直接会って相談することができない中で演出プランを練ったという佐々木氏。「演出担当回のめぐりあわせで、義輝登場のシーンのある回を僕自身は演出しておらず、向井さんとしっかり話すのは、撮影再開直前の殺陣稽古の時になってしまいました。ですので、事前に向井さんに長々とお手紙を書きました。自分の演出のプランとそれを思うに至った訳を。また、この状況下では殺陣稽古も数多くはできないので、本番の数日前に1度きりでした」と、明かしている。
最初で最後となった稽古で、向井はいきなり「義輝の心情は、どこに描いていきましょうか?」と聞いてきたという。「しかも、あのさわやかな笑顔で。殺陣の動きや演出意図はすべてわかった上で、“その先”の話から会話がスタートしたんです」。事前に殺陣指導の久世浩氏がつけた動きを動画に撮って送っていたそうで、撮影中断の間に向井は完ぺきに動きをマスターしており、「向井さんが求めたのはその動きの中に宿すべき“魂”でした」と佐々木氏。
向井が並々ならぬ思いをこのシーンにかけていたことが伝わってくる話だ。佐々木氏も「驚きと感動に包まれた」という。そして、「ただ単に華麗に斬っていく、華麗に散っていくだけではなく、やり残したことへの思い、襲いかかる敵に対する気迫、カットごとに、義輝の思いをどう表現するか」に集中して撮影していった。
「(動きに目が行きがちな)殺陣シーンであるにもかかわらず義輝の目と表情が印象的です。なにやら覚悟を決め、文言を唱えたあと。太刀を抜いた時。相手に太刀を突き立ててまま鬼気迫る感じでグイっと押し込む。たくさんの者を相手にして疲れているかもしれないけれど、気合をまき直し外へ出ていくときのその目。槍を突き立てられてもなお、あきらめるというよりは、この世の理を知ったような静かな目。わずかな時間の中にたくさんの“目”が表現されたのは、向井さんのこだわりと芝居のなせる業だと思います」(佐々木氏)
実は、歴史研究でも注視されるような史料から言い伝えまで、義輝のこの時の様子は数多く伝えられている。「永禄の変をご存じなかった方にも楽しんでいただきたいし、詳しくご存じの方にも『そうきたか』と思っていただきたい。実は初期段階では、『剣豪である義輝は名刀を畳に何本も刺しておいてそれを取り換えながら戦った』という話も取り込もうと考えた時がありました。実際そして美術スタッフさんには立派な太刀を何本も用意するようお願いもしていました」。
しかし、向井版“義輝”の魅力を伝えるために、彼の心情に寄り添いながら臨場感を出していくことを選んだ。「太刀はどの名刀ということなく、最初の一本にそのイメージを託しました。そして、戦っていく中で、相手の武器を奪いながら戦い続けることで、その強さを表現しようと考えました。太刀や薙刀を、その戦う場所のリアルな武器選択として、つまり屋内の近接戦闘であれば太刀、屋外であれば人を近づけぬように薙刀をというように。そして薙刀を持った強い義輝に容易に近づけないと思った三好方が障子でその動きを抑え込むという、そんな“リアル”をベースとして、その中に向井さんの美しさとはかなさを封じ込めようと考えました。名刀がたくさん出てくることを期待して下さったみなさんがいらっしゃるとすればすいません」と説明。
また、義輝の最期は、畳で四方を囲われたという説もあるが、『麒麟がくる』では“障子”を選択。
「映像として、その畳の下に敷かれてしまったまま倒れている義輝を想像した時、“無様”と言ってもちょっと自分の求めている質とは違うなと直感しました。美しさと無様が同居を考えた時、畳は自分自身の中であまりにリアル過ぎました。障子ですと、義輝の動きが抑え込められながら、槍を突き立てられるときは紙一枚向こうであるという、“生のはかなさ”みたいなものがでるのではないかと。そして何より、このドラマの義輝には畳より障子のほうがいいと思ってしまいました」と、演出面での工夫を明かしていた。
そして、殺陣シーンの収録を無事終え、向井のこのドラマにおける出番はすべて終了(オールアップ)。その時、スタッフに向けて「演じるのが当たり前と思っていたけれど、撮影の中断によってそうではない何もしない期間を経て、またカメラの前に立つことが出来て、演じられる喜びをひしひしと感じた撮影だった」と語ったそう。その時の向井の“目”も印象深かったと佐々木氏。
「向井さんが出番を終えることと義輝がこのドラマから退場すること、その寂しさが一気に心にきました。義輝と向井さんはやはりこの日“一つ”になっていたと確信し、うれしくもあり寂しくもあるそんな撮影になりました」と述懐していた。
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2020-09-20 11:58:12Z
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