鎌倉御所・実朝の居室にて。北条泰時(右、坂口健太郎)に和歌を贈る源実朝(柿澤勇人)(C)NHK
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。10月16日放送の第39回「穏やかな一日」では、公私ともに悩みが付きない三代目鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)の、まったく穏やかではない真実が示唆され、視聴者の間に大きな衝撃が走った(以下、ネタバレあり)。
■ 長年抱えてきた、実朝の悩みが明らかに
初代執権・北条時政(坂東彌十郎)追放直後から、天然痘にかかっていた実朝だが、奇跡的に回復。政に戻ったものの、叔父の義時に実権を握られ、自分の立場に疑念を抱きはじめる。また御台所・千世(加藤小夏)との間の跡継ぎもなかなかできず、業を煮やした乳母・実衣(宮澤エマ)は、側室候補としてよもぎ(さとうほなみ)を送り込むが、実朝はやんわりと拒絶する。
その一方で実朝は、幼い頃から親しくしていた義時の長男・泰時(坂口健太郎)に和歌を送り、その返歌がほしいと頼む。しかし和歌の心得がない泰時は、返歌どころか、歌の意味も読み込めなかった。京から実朝の指南役として送り込まれ、当代一流の歌人・藤原定家と実朝をつないだ源仲章(生田斗真)は、たまたまその歌を目にして「これは恋する気持ちを詠んだもの」と泰時に告げる。
蹴鞠の指導をした義時の異母弟・時房(瀬戸康史)に、「いらっしゃいますか? 心を開くことのできるお方が」と問われた実朝は、その夜、千世に「私のなにが気に入らないのですか」と涙ながらに詰問される。
そこで実朝は「初めて人に打ち明ける」と前置きしたうえで、自分は子作りをする気にはなれず、その後ろめたさから一緒に居づらかったということを告白。千世は「話してくだり、うれしゅうございました」と実朝を抱きしめて、その辛い事実を受け入れるのだった。
その後、泰時は実朝が送った歌を、「鎌倉殿は間違えておられます。これは恋の歌ではないのですか?」と返却。それを聞いた実朝は、複雑な表情を浮かべながら「そうであった。間違えて渡してしまったようだ」と、代わりに「大海の 磯もとどろに 寄する波 割れて砕けて さけて散るかも」という、懸命に打ち明けた想いが砕け散ったことを示すような歌を、泰時に手渡す。その歌を前に、泰時は一人悔恨の酒を浴びるのだった──。
■ 「これぞ令和の大河ドラマ」の声も
実朝は結局このあとも、子どもが生まれることがなかったため、源氏の嫡流はそうそうに途絶えることになってしまった。その原因として「同性愛者」という説もささやかれてはいたけれど、まさかその説を大胆に取り入れるなんて。しかも片思いの相手が「俺たちの泰時!!」 と、多分誰も予想しなかった展開に、まさに度肝を抜かれまくった第39回。
SNSでも「実朝さまが『自分には世継ぎが出来ないと思う』と言ったことは確か吾妻鏡に記されているんだが、その理由をこう書いてくるとは思わなんだ」「今の時代にこう膨らますか、さすがです、三谷さん」「これぞ、令和の大河ドラマ」などの声が。
さらには「時代劇で、主要なキャラクターが同性愛者として偏見や差別的描写なく真摯に描かれたのって見たことなかったから、いちクィア当事者としてめちゃくちゃうれしい」という声もあった。
■ 実朝の代表歌の三谷的解釈に、衝撃走る
とりわけ視聴者の切なさがマックスになったのは、泰時に送った恋の歌が「間違えておられます」と突き返されたシーン。これを、泰時が真意に気づけなかったと解釈して「このにぶちん!! メフィラス(三浦義村/山本耕史)から恋心のレクチャー受けろ!!」などと叱咤する人もいれば、逆に「間違いじゃないですか? って言いに来た時点でもう実朝くんの本心には気づいていて、渡す紙を間違えたことにしましょうよって言外に伝えてるんだよな・・・」と、わかってて突き返したという推察も。
さらに、その代わりに渡した歌「大海の〜」は、一般的には磯に荒波が打ち付ける光景を、見事なリズムで描写した傑作と言われているが、まさかの失恋ソングにするという展開に、「実朝の歌が、失恋の歌になってる〜! 恋に玉砕した歌に~!」「まさか金槐和歌集(注:実朝の歌集)で 1番有名な歌を失恋の歌にするとか思わないじゃん」「これを、たった1人の恋しい相手へ募らせた思いが今終わった、という解釈にした三谷幸喜・・・」とのコメントがSNSにあふれた。
もうひとつ「切ない」といえば、今までずっとぎこちない関係だった実朝と妻・千世が、実朝の告白で、ようやく心が通じ合ったシーン。「実朝様は御台所だけに打ち明けた。そして御台所も受け入れた。このおふたりは本当の意味でのパートナーになれるのではないか」「長年抱えた悩みを打ち明けた第一声が『話してくれてうれしい』って泣いてくれる方が妻で良かったね」と、称賛と祝福のような声が相次いだ。
■ ミュージカル仕込み、柿澤勇人の節回しに驚きの声
ちなみに実朝を演じる柿澤勇人は、伝統芸能の家に生まれ、劇団四季に入団。『ライオンキング』などいくつかの作品で主演を務めたのを経て、退団後はミュージカルの舞台を中心に活躍中だ。その出世作『スリル・ミー』は、ゲイの恋人たちが起こした恐るべき犯罪の物語を、ピアノ生演奏付きの2人芝居で見せるというミュージカルなので、ちょっと『鎌倉殿』の実朝ともかぶるところがある(ちなみに相手役は松下洸平!)。
今回は実朝が自作の和歌を、三善康信(小林隆)に添削してもらうために、朗々と詠唱するシーンもあったのだが、ミュージカル仕込みの絶妙な節回しに、SNSでは「素晴らしく美しい朗詠!」「さすが劇団四季だけあって、和歌を詠む歌のお声の伸びが素晴らしい」「『柿澤勇人が詠む小倉百人一首』のCD付きムック本を売ってください」など、その美声に驚きの声も多数上がっていた。
柿澤の歌を生で聞いてみたいと思った方は、最新主演ミュージカル『東京ラブストーリー』が、11月から東京、大阪などで上演されるから要チェックだ。
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『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第40回『罠と罠』では、和田義盛を中心に、義時のやり方に不満をつのらせた御家人たちが、次々と実力行使に出る様を描いていく。
文/吉永美和子
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2022-10-17 21:58:37Z
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