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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第112回をライター・木俣冬が紐解いていく。
賢秀と清恵、そろそろハッピーエンドが近づいてきた?
清恵(佐津川愛美)は「本日貸し切り」の張り紙には気づくのに、「改装中で休業」の張り紙には気づかなかったのでしょうか。それはさておき。豚肉が買える店情報を伝えに来て、偶然、賢秀(竜星涼)に見つかってしまいます。でもここでハッピーエンドにはならず、まだまだ引っ張ります。痴漢に間違われた賢秀が苦い顔でちむどんどんに入ると、クラッカーが一斉に鳴って時期外れの誕生日を祝福されるという展開には笑いました。そうか「ちむどんどん」って3ヶ月も前の誕生会のような意味のわからない感じそのものです。このときの暢子(黒島結菜)のとんがり帽子姿がなんともいえずかわいい。
時期外れの誕生会の意味のわからなさと、賢秀と清恵のすれ違いを「やんばるの野生児の勘」という暢子の言葉がすべて解決してしまう力技。
確かに、シークヮーサーをかじると勘が冴え、元気が出たこともありました。暢子の勘の良さは冴え、房子(原田美枝子)に電話した直後、房子を訊ねて清恵がやって来ます。
清恵には房子、賢秀には三郎(片岡鶴太郎)が助言して、いよいよ賢秀と清恵のハッピーエンドが見えてきました。
しかし、賢秀、清恵はちむどんどんの近くで働いていることがわかったにもかかわらず、鶴見方面をまた探しているのが謎。智(前田公輝)が事故ったベンチとポストと公衆電話のある道は鶴見のほうですよね。まさか杉並設定???
しかも何度も何度も清恵のいる同じ水商売街も探している。まあ、現場100回と言いますし、何度も同じところを探すのも大事ですけれど。
さてさて、こんなふうにこじれたのも、賢秀が養豚の仕事をしていることを身内や知人に隠しているから。養豚の仕事を恥じるのは実際に従事している人に失礼というような声がネットで上がっているようです。
こういう話は難しいです。いまは、なんでも平等にという考えが広まっているから、失礼だという意見が出るのでしょうけれど、偏見があった事実もあるわけで。なかったことにしないでそれを伝えることも必要だと思うわけです。ただ、昨今のニーズを慮り、作り手なりに偏見をネガティブに描かないように気遣い、それによって余計に意味合いが伝わりにくくなるという悪循環を感じます。
賢秀の場合、子供のときから豚の飼育は得意で、大人になってもなんとかのひとつ覚えのようにそれしかできないということを恥ずかしく思っていて、何か違う、もっとすごいこと(ピッグではなくビッグなこと)をやってみんなを驚かせたいという一心であるとも解釈できます。
賢秀の問題は、職業差別とは別の、「成功」「お金持ちになる」というようなことに囚われ、そこに到達できないから自己肯定感が低くなってしまっているところにあるようです。
賢秀はようやくそのトンネルから抜けて、自分の仕事に自信を持つことができそうですが、誰しも、自信のある仕事や生活をしていないと昔の知り合いに会いづらいことがあります。例えば、長いこと同窓会に出なかったけれど、仕事で成功したから出席したということってあるあるです。なかには無理して自分を良く見せ続ける人もいます。
手前味噌ですが、拙著「ネットと朝ドラ」では、ネットで誰でもなんでも発信できる時代になったのと同時に、あまりに多くの意見があるため逆に何も言えなくなってきた時代の朝ドラについて書きました。賢秀の仕事に関する批判も、どう語っていいか迷走してしまった時代の問題だと感じています。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中。
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2022-09-13 00:25:15Z
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