■自分の中でもやもやとした気持ちが、他の誰かにも当てはまるのではないかと感じた
――これまで携わってきた役を通して自分を振り返るという内容でした。これまでの役を丁寧に振り返ることにした理由は?
戸田:まず、自分のこれまでの人生を振り返ってみて感じたのが、“仕事そのもの”だったなって。なので、まずは自分の仕事を振り返ることで自分自身が見えてくるんじゃないかなと感じたことがはじまりでした。『彼女』の中にもあるのですが、「“ありがとう”って言ってもらえることが自分にとっての幸せにつながるだろう」って言葉をいただいたときに、「自分の真っすぐで不器用な生き方や考え方が誰かの救いになり、寄り添えるものになったら本望だなって感じたんですよね。
――プライベートなことや普段は表に出さないような感情など、本当に赤裸々に語られていましたよね。そういったことを伝えるうえで気を付けていたことはありますか?
戸田:過去に「言葉に説得力があるから、本を出した方がいい」と言われたことがあって。友人にも「恵梨香の言葉って独特で印象的だね」って。でも自分の中でずっと腑に落ちてなかったんです。ただ、そのように言っていただけるってことは、素直に自分の思う言葉の選択をした方がいいんだろうなって思って。「変に繕うことなく、素直に」というのは心掛けたことでした。
――対話するような印象も受けたのですが、誰に宛てた文章だったのでしょうか。
戸田:この本を手に取ってくれる読者のことも頭にあったかもしれません。リアルタイムで感じる自分の心の声っていうのがあって。このもやもやとした気持ちっていうのは、もしかして誰にでも当てはまるんじゃないかなって感じたんです。
■自分の素直な想いとか言葉は、まっすぐに届くわけではない
――長いキャリアで初のトークエッセイ。このタイミングでの出版には意味がありますか?戸田:なぜ今っていうのはわからないんですけど、やっぱり役者としてひとつの壁にぶち当たっていたということなんだと思います。こうやって、内側に向き合う自分を見つめるっていうことが、今を生きる人たちにとって本当に重要なことに思えて。
――今を生きる人っていうのは、時代的な意味でしょうか?
戸田:今はSNSなどで自分の想いを簡単に出しやすいように見えるんですけど、本当の自分の想いとは別物なんじゃないかと、私はとらえているんです。素直な想いというよりは、不特定多数の誰かが見ているかもしれないという前提のもと、誇張している…みたいな。でも、そういったものとは切り離して、外野に邪魔されることなく自分の幸せにむけて突き進んでいくことが本来の幸せだと思うんですよね。
――戸田さんは職業柄、注目を浴びることが多いですが、そういった意味で悩むことやつらいと感じることはありますか?
戸田:ありますね。自分の素直な想いや言葉は、まっすぐに届くわけではないんだなって。何かを発信することって、やっぱり怖いことだなって思い続けてます。でも自分が信じた道だから、恐れすぎないようにしたいなとは思っています。
――壁にぶち当たって、自分の想いを形にすることで、心が晴れたり、解決に進んだりしたことはありましたか?
戸田:そうですね。すっきりしました。書き終えてみて、自分にこういった一面があったんだなって気づきになりましたし、「私、書くことが好きかも」とも思えました。
■結婚が役者としての自分にいい作用をするのか…今でも疑問
――働き方について見直されている現代ですが、それでも働きすぎたり、無理をすることが美学というような風潮もまだ残っていると思うんです。本の中で戸田さんは『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系/2008年)の後から「年に一度まとまったお休みを頂けるよう掛け合った」とありました。10年以上も前から働き方について考えているというのも戸田さんの芯の強さを感じました。
戸田;疲弊していたんです(笑)。他の作品と掛け持ちして撮影するのが当たり前で、役者としてやらなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、私自身は抜け殻で、何者でもないって気づいた瞬間に怖くなってしまったんです。一種の焦りですね。
――でも逆に、焦ると仕事をしないといけないってなっちゃう方が多いんじゃないかなと思うんです。
戸田:確かにそうですよね。でも、このまま目の前のことだけを見て走っているだけでは、いつか限界がくると思ったんです。自分の体力も、心も、役者としても。自分と向き合ったり、さまざまな経験を積むことがお芝居につながるんじゃないかと感じて。受け入れてくれた事務所にも感謝していますし、私にとって必要な選択だったと思います。
――勝手ながら、戸田さんは演じるということや俳優という職業にこだわっているように見えるのですが、本の中では監督や演出にも興味があるとおっしゃっていましたよね。
戸田:『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系/2010年)を経て、加瀬亮さんという俳優に出会ったことで、役者が作品に携わるということの本質を教えていただいた気がしたんです。その頃から、監督も、俳優も、結局はこの作品を良くしたいっていう同じ思いでここに集まっているんだなって思ったら、芝居だけじゃなく全体を考えて作品を作りたいって思うようになったんです。
――ストイックですよね。
戸田:限界を超えたところまで行きたいと常に考えているので、執着とか、プライドとか、意地とか、すごく強いタイプなんだなとは思います。
――結婚という選択をしたことによって影響したことはありますか?
戸田:肩の力が抜けたなって思います。大きさはわからないけど、全部ひとりで背負っていて、ずっと戦闘モードでいたので。顔が変わったって言われるようになって、役者として大丈夫なのか、少し不安にもなる出来事でしたが(笑)。
――でも、きっと褒め言葉ですよね。
戸田:最初にもお話しましたが、私の人生が仕事そのものだったから…仕事だけじゃなくなったという事実が、役者として良い作用になるのかは今でも少し疑問に思っています。でも人として、ひとりの人間として、いままでに感じたことのない安らぎや、心の余裕を持てるようになって、人生がひとつ、違うフェーズに行ったんだなということを、感じ取っています。
――では最後に、戸田さんが今後こんな人生を歩みたいなという目標などがあれば教えてください。
戸田:まだまだ不透明なところがあって、この先も試行錯誤しながら進んでいくんだなとは思っているんですが、自分が楽しいと思えることや、幸せだなと思えることをその都度選択していくことが、何にも代えられない魅力になっていくんじゃないかなって思っています。
●戸田恵梨香『彼女』ワニブックス刊
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2022-12-27 23:45:00Z
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