女優の吉高由里子が主演するNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)の第27回「宿縁の命」が14日に放送される。
大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、1000年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部/まひろの生涯に迫る。先月30日に放送された第26回「いけにえの姫」では凶事の続く都の混乱を鎮めるため、道長(柄本佑)は長女・彰子(見上愛)の入内を決意。まひろ(吉高)は夫・宣孝(佐々木蔵之介)の間に亀裂が生じ、自分を見つめ直すため石山寺へと向かい、道長と再会を果たす姿が描かれた。
前週は都知事選の開票速報の影響で放送休止となったため、1月から毎週欠かさず続けていた当コラムも必然的にお休みに。書き手のこちらも体内時計が狂って変な感じだった。記憶が薄れている視聴者もいらっしゃるかもしれないので、改めて前回のおさらいを。
安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)の助言により、彰子を一条天皇(塩野瑛久)のもとに入内させることを決めた道長。史実では、彰子が入内したのは数え年で12歳といわれている。妻・倫子(黒木華)は、帝の寵愛を一身に受ける中宮・定子(高畑充希)を引き合いに「そんな負けの見えている勝負などに…」と娘の身を案じるが、道長は「勝負ではない! これはいけにえだ。手塩にかけた尊い娘ならばこそ値打ちがある」と絞り出すように話す。「値打ちが」と「ある」の間の一拍の呼吸。父としての思い、為政者としての思いが対照的なベクトルで交差する。
成長してからは初登場となった彰子は表情に乏しく、何を考えているかうかがい知れぬ表情で、父に何を言われても「仰せのままに」と始終ぼんやりしているように見える。この先がちょっと心配になるが、三男坊を謳歌(おうか)していたころの道長も大概ぼんやりしていたので、父譲りの描写といえそうだ。親子ともども、今後の覚醒が待ち受けているのか。
一方のまひろは、最初こそ宣孝と仲むつまじい姿を見せるが、しだいに価値観の違いが浮き彫りに。筆者はこの回を初めて見たときには、完全にまひろに同情し「殿、ひどい!」とイタコのようにプリプリしたものの、2回、3回と繰り返し見ると捉え方が少しずつ変わってきたのが不思議だった。
好むか好まざるかは置いておいて、清濁併せ呑む宣孝のスタンスは一貫している。まひろは災害で家をなくした貧しい子どもに慈悲をかけるが、その財源は宣孝の稼ぎだろうから、冷たいようだがある種の“損切り”。他の女に文を見せていることも特段悪気はなく、若い女に通っていることをまひろにいさめられれば、本心はどうあれ「わしが悪かった」とサクッと謝れる。売り言葉に買い言葉で左大臣の名を出してしまったことは悪手ではあるが…。折れることができないまひろの潔癖さに、あの庚申待の夜がダブる。まひろは救いを求めるように石山寺へ向かい、道長も姿を見せる。
視聴者も2週間ぶりの再会となる第27回は、石山寺での邂逅(かいこう)の続きから描かれる。筆者はてっきり逢(あ)い引きか?と思っていたが、公式サイトのあらすじによると、どうやらばったり出会ったらしい。あらすじからそのまま引用すると「思い出話に花を咲かせるうちにふたりは…」。ひと足先に試写で見たが、この「ふたりは…」は、みなさんリアルタイムでご覧になったほうがよろしいかと。記者は事前取材の兼ね合いなどもあるので数回先の台本を閲覧することもあるのだが、この回をめぐっては記者間でもかなり沸いた。
季節が変わり、道長の娘・彰子はいよいよ入内するが、その6日後に定子は皇子を出産。ますます定子&皇子へと気持ちが傾く一条天皇を憂いた道長は、晴明からとんでもない提案をされる。そしてまひろは懐妊が判明し、宣孝は喜ぶが…という展開が繰り広げられる。
「光る君へ」という作品は、歴史を描くのはもちろんだが、なによりも人を描いているんだなと再確認させられた回。人間はいとおしく、愚かで、純粋で、ずるい。のちの「源氏物語」の描写にもリンクするような展開もあるので楽しんで見てほしい。予告にも登場した「新猫」白黒ハチワレ猫ちゃんの素性も気になるし、2週間待った値打ちは存分にあるはずだ。(NHK担当・宮路美穂)
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2024-07-13 04:00:00Z
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