「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん=当時(77)=を2018年に殺害したとして、元妻須藤早貴容疑者(25)が逮捕された。約13億円に上る野崎さんの遺産が事件の背景にあるとみられており、県警は関連を慎重に捜査。容疑者には遺産の半分の相続を求める法的権利があるが、展開次第で失う可能性もある。

田辺市によると、野崎さんの死後、「全財産を市に寄付する」との遺言書の存在が判明。13年2月8日付で手書きされたもので、和歌山家裁田辺支部は要件を満たすとした。市は約13億円の遺産の受け取り手続きを進めている。

野崎さんに子どもはいない。わかやま法律事務所(和歌山市)の岡正人弁護士によると、民法上、遺言内容にかかわらず妻である須藤容疑者には「遺留分」として遺産の半分の相続を請求する権利がある。仮に、野崎さん殺害の罪で刑罰を受けた場合は「相続人の欠格事由」に該当し、遺産を受け取れない可能性がある。

遺言書を巡っては、野崎さんの兄ら親族4人が20年4月、無効確認を求めて和歌山地裁に提訴し、現在も係争中。

県警は、致死量の覚醒剤を口から摂取させて野崎さんを殺害したとして、殺人容疑などで須藤容疑者を先月28日に逮捕。認否を明かしていないが、事件後の任意の事情聴取に関与を否定していた。(共同)