俳優の吉沢亮が主演を務める大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。5月30日放送の第16回「恩人暗殺」では、渋沢篤太夫(栄一から改名)の恩人であり、徳川慶喜(草なぎ剛)の最も信頼できる家臣・平岡円四郎(堤真一)が暗殺された。慶喜と円四郎の出会い(第4回)から演出を担当してきた村橋直樹氏に、第16回の慶喜と円四郎の場面に込めた思いや撮影の裏話について話を聞いた。
第16回は光が印象に残る回だった。慶喜は「私は輝きが過ぎるんだ」と円四郎に抱えている悩みを吐露する。これまで輝き過ぎて多くの者の人生を狂わせてきた。でもその輝きは幻に過ぎないと慶喜は思っている。歴史ある徳川家の命運を背負う葛藤を慶喜が語るとき、画面はものすごく明るい照明に包まれていた。慶喜を見つめる円四郎も眩しそうである。この照明は狙っていたと村橋氏は言う。
「あのシーンの慶喜は、円四郎が暗殺される前、最後に見る姿です。円四郎が亡くなる前ですから円四郎中心の照明プランにするやり方もありますが、ここはあえて円四郎が見た最高に輝いている慶喜にしたくて、屋敷の外から明るい陽光が慶喜に向かって差し込むようにしました。あの逆光は、第4回で慶喜と円四郎がはじめて会ったとき、ご飯をよそうことが下手な円四郎に慶喜がお手本によそってみせて、『実にふわりと美しく盛られてございまする』と円四郎が言うと『さようか…よかった』と慶喜が安堵したような顔をする。あの場面に少し似た明かりにしているんです」
そう聞いて、第4回を見返してみた。確かに白く美しい光に慶喜が包まれていた! しかも彼がよそった白米もつやつやで輝いていた! 慶喜は農民に感謝するための農人形を大事にしているので、彼が権力にあぐらをかくことなく労働する農民への感謝を忘れない美しき心の輝きが米にも慶喜にもあると感じる画である。
「輝き過ぎるんだ」と謙遜する慶喜の輝きに、円四郎は心酔し、「尽未来際(永遠に)」ついて行くと誓い、慶喜はうれしそうに微笑む。この瞬間を村橋氏は“人生最高の時”と考えた。
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2021-05-30 12:30:00Z
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