吉永小百合(79)が24日、都内の池袋・新文芸坐で行われた、映画女優デビュー65周年記念企画の一環として開催された特別上映会の席上で、16日に心不全で81歳でなくなった、中尾彬さんを悼んだ。

吉永は60年、中尾さんは62年に日活ニューフェイスの第5期に合格し、それぞれ日活入りし、1966年(昭41)の映画「愛と死の記録」(蔵原惟繕監督)で共演。吉永は楽器店で働く松井和江、中尾さんは、渡哲也さんが演じた広島に投下された原爆に被爆した三原幸雄の友人・藤井を演じた。

吉永は「渡さんも、4年ほど前に亡くなって、もうお話しすることがなくなりましたし。この映画には、中尾彬さんも渡さんのお友達役で出ていらして。中尾さんも最近、亡くなられたという…本当に、寂しいことなんですけれども、ぜいぜひ、この映画は、すばらしい映画だと思います。また皆さんにも、見ていただきたいと思っています」と、中尾さんの死を悼んだ。司会を務めた、映画研究家の佐藤利明氏(60)が「中尾さんとお話を伺った時、日活時代の映画の中で、実はこの映画が1番、印象に残っていて『小百合さんが、すごい頑張ったんだよ』と」と、生前の中尾さんの言葉を紹介。吉永は「蔵原監督が、とても厳しくて、皆で力を合わせてやりました」と撮影を振り返った。

吉永は、撮影中の渡さんとのエピソードも明かした。

吉永 浜田(光夫)さんが、おケガをなさって、この役がやれなくなってしまって、渡さんと、ということになった。渡さんはアクション映画でデビューなさった方なんですけれども、一生懸命に取り組まれました。ロケは隠し撮りみたいな形で撮ったんです。リハーサルを何度もして、本番はパッと撮る形になったんです。旅館に帰って、ご飯を食べて、その後にリハーサルをして、次の日に備える。ある日、渡さんが見つからないんです。どうしちゃったんだろうと、皆で探したら…渡さんのお部屋の押し入れの中で眠っていたんです。疲れていて…リハーサル嫌だったのかな? と思って、皆でかわいいね…そんな時がありました。

「吉永小百合 映画女優デビュー65周年記念企画」は、23年の主演作「こんにちは、母さん」(山田洋次監督)で出演した映画が123本目となった吉永の、スクリーンデビュー65周年を記念して開催。“吉永小百合の青春時代”をテーマに、2年間にわたり実施するが、6月6日刊行の「吉永小百合 青春時代写真集」(文藝春秋社)の発売に先立ち、吉永が自ら選んだ作品の上映を行う、発売記念特別上映会を開催した。

当日、上映したのは次の2作品。

<1>「潮騒」(森永健次郎監督、64年)出演:吉永小百合、浜田光夫、清川虹子、平田大三郎。三島由紀夫の原作を、吉永小百合と浜田光夫の日活青春スターコンビ共演で映画化。小島の漁村を背景に、若い漁民と海女の恋物語を詩情ゆたかに描く文芸青春大作。

<2>「風車のある街」(森永健次郎監督、66年)出演:吉永小百合、浜田光夫、芦川いづみ、新井麗子。吉永・浜田の純愛コンビが、長期オランダロケを敢行。チューリップと風車が美しい異国の地で、心に宿る本当の愛を探す純愛ドラマ大作。